Photographer

彼には夢があった。
いつの日か、ベッドフォードホテルを舞台にした写真集をつくりたい。
彼は駆け出しのフォトグラファー。
故郷のアイダホを飛び出し、奨学金でニューヨークのアートスクールに飛び込んで写真の技術を学んだ。
卒業後、彼はベッドフォードホテルから3ブロック離れた撮影スタジオで働きはじめ、
ただ近くて安いからという理由でこのホテルに部屋を借りた。
しかし、この決断が彼の人生観を覆すことになる。
ここは魔窟だ。
かつてお目にかかったこともないような、摩訶不思議な住人たち。
昼夜を問わず巻き起こる論戦、セッション、喧嘩、パーティー。
ラウンジの端に置かれた、酒と煙草の匂いが染みついたソファに座っているだけで、
無限のインスピレーションが湧き出るのを彼は感じた。

ホテルに出入りする魑魅魍魎の中で、一人の女性が彼の心を捉えた。
ブロンドのショートボブ、よく動く丸い目、肉感的な唇。
彼女を撮りたい。
しかし、ルックスに若さゆえの過剰なコンプレックスを抱えた彼は声をかけることができないままだった。

ある金曜の夜。
スタジオの後片付けを終え、鉛のような足を引きずりながらホテルへ辿り着いた彼は、
棺桶に倒れ込むようにエレベーターに乗った。

「待って!」鈴のような声とともに、真っ赤なヒールがエレベーターに駆け込んでくるのが目に入った。
彼女だ。甘い香りが彼の鼻腔を支配し、心臓が、一気に早鐘を打つ。
顔を上げることのできない彼に向かって、彼女は囁いた。

「ねえ、私のこと覚えてる?」

※ストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

BFH-09 BK
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