Designer

いつにも増して、寒さの厳しいニューヨークの冬。
隙間風の入り込むベッドフォードホテルは、北向きの部屋の冷え込みが殺人的で、必然的に料金も安い。
常連客なら見向きもしない北西向きの薄暗い部屋で、頭からすっぽりとブランケットをかぶり、
一人の若者が一心不乱にスケッチブックに筆を走らせている。
知的な印象のメガネをかけたその横顔は、凛とした女性のようにも、神経質な男性のようにも見える。

トランスジェンダー。
今となっては誰もが知る単語ではあるが、当時はニューヨークでさえ好奇の目にさらされる存在だった。
しかし、このホテルの住人にとってそれは些細な問題に過ぎない。
それよりも、彼女の次のコレクションがどんな驚きを世の中に与えるか?その一点に関心が集まっていた。
彼女はファッションデザイナー。
独特のシェイプと奇妙とも言える大胆な色づかいは、
マンハッタンのファッショニスタたちから注目を集めはじめていた。

ある夜、彼女のひとつ上の階に住むストリッパーが訪ねて来た。
いつも笑顔に振る舞い、ホテルの住人たちと陽気に会話を交わすその女が、
派手なメイクを落とし、思い詰めた表情でドアの前に立っている。
女を部屋へ通し、熱い紅茶を淹れて小さなソファに並んで腰をかける。
長い長い沈黙の後、ストリッパーは意を決してこう切り出した。

「アタシさ、アンタに服を作ってほしいんだけど」

※ストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

BFH-07 SMOBR
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BFH-07 SMOBR
made in JAPAN
¥19,800