Gallerist

彼は焦っていた。
ジェイコブと連絡が取れない。

彼は、モダンアートを専門に扱うギャラリスト。
美術専門誌の編集者として十分に経験を積んだのち、ヴィネガーヒルの古びたビルに小さなギャラリーを開いた。
隙のないスーツ姿にボストンのメタルフレーム。
出会った瞬間に安心感を与えるその佇まいと、アートに対する深い造詣によって、彼はすでに何人かの顧客を獲得していた。
万事が順調。
ギャラリーが主催する初のエキシビションに、彼は自ら発掘した気鋭のフォトグラファー、ジェイコブを抜擢した。

しかし、オープンの5日前になって、ジェイコブは忽然と姿を消した。
根城にしていたベッドフォードホテルの部屋に行ってみると、
彼の姿はもちろん、床を埋め尽くしていた大量のネガやプリントさえも完全に消失していた。
呆然とした足取りで、彼は階下のBARへ立ち寄り、カウンターの片隅に力なく身を沈めた。
まだ日の高い時間にも関わらず、すでに何人かの住人がグラスを傾けている。
好奇の目を避けるように俯いたままバーボンを舐める彼の頭上に、鈴の音のような声が鳴り響いた。
「アタシ知ってるよ、ジェイコブがどこへ行ったのか」
思わず顔を上げると、目の前に一人の少女がちょこんと腰かけて微笑んでいた。

※ストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

BFH-03 AG
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