PART 02 眼鏡市場のレンズ戦略

PART1では、眼鏡市場がメガネ店として、今後の日本社会へ価値を提供する上で「高齢化社会の加速」が大きなテーマになっているというお話を伺いました。これまでのメガネ業界の流れの中で、消費者のニーズや感性に変化を感じていますか?
これまでの業界の流れとして、私たち眼鏡市場の前身であるメガネトップも含め、いわゆる老舗と呼ばれるメガネ店がロードサイドを中心に多店舗展開で商圏エリアを拡大させてきました。


確かに、いまも大型ショッピングセンターや幹線道路でメガネ店をよく見かけますね。
当時、メガネの売り方といえば、高機能なレンズは高価格でした。例えば、遠くと近くを見るための遠近両用のような多焦点レンズは、もちろん追加料金をいただく。お客さまの見え方をサポートするような機能性を加えていくたびに、追加料金が発生していくビジネスモデルです。


眼鏡市場で販売している多焦点レンズは追加料金0円ですが、昔は違っていたんですね。
多焦点レンズや度が強い方向けの薄型レンズを選択すると、どんどん追加料金が上がっていくビジネスモデルは、お客さまの買い物に対する不安やストレスとなっていることに気づきました。そこで、2006年に「メガネトップ」という屋号を「眼鏡市場」へ変更し、見え方に対するお悩みやお困りごとを解消するレンズは多焦点レンズも含めて、全て追加料金0円とするビジネスモデルに変更しました。


その流れなのか、現在のメガネ店は、どこも追加料金0円を打ち出すお店が増えてきているようですね。
一方で、5,000円でメガネが購入できるなど、ロープライスメガネ店の出店が増加していきます。そこからメガネ業界全体の時流がファッションとしての気軽さを求めるようになり、低価格競争が始まっていきました。


確かに、現在のメガネは視力矯正器具としてだけでなく、カジュアルなファッションアイテムとしても扱われているような一面もありますね。そこがメガネ選びの楽しさだったりするのかと。
眼鏡市場が考える、 メガネ業界の現在地と未来
レンズの追加料金を設定して、いかに販売単価を上げるかというところから始まり、今度は価格破壊の連鎖が生まれローコストかつファッション感覚で本数を売っていくビジネスモデルへ変化していく。そして、これから高齢化社会へ向かう日本社会の中で、快適な毎日を過ごすためのアイテムとして、いかにしてお客さまへ寄り添えるかも必要になってくると想像しています。


まさに、冨澤社長のお考えにある、視生活の多様化に対するストレスフリーなレンズのご提案がより求められるようになるかもしれませんね。
ただ、レンズを含めたメガネ全体の原価を考えると、追加料金0円の実現は決して簡単なことではありません。事実、レンズの追加料金を0円にしているメガネ店は増えていますが、多焦点レンズのようにオーダーメイドな設計が必要なレンズは、追加料金としているお店がほとんどです。


多焦点レンズといえば、異なる距離が見える2枚のレンズを組み合わせるレンズですよね。単純計算してレンズ料金が倍になるのは当たり前といえば当たり前ですが…
私たちには、積み上げてきた全国約1,000店舗と、売上日本一という強みがあります。物量などから生まれるスケールメリットにより、多焦点レンズも追加料金0円を実現できています。そこから先、私たちの課題は、高齢化と多様化が進み視生活で増えるお困りごとに寄り添えるよう、社内研修などを推進することで技術面の向上に加え、専門性の高い知識を習得していく必要があると考えています。

眼鏡市場は、 全国1,029店舗


「量」の強さを生かしながら、「質」を常にアップデートし続けるイメージですね。
アイケアの視点からお客さまのお困りごとに適正価格でお応えしていく。また、快適さの視点からメガネのある生活がポジティブになるようなフレームも含めた商品開発に力を入れていく。これからの挑戦には、既存のサプライチェーンの中で私たちを支えてきてくれたレンズメーカーはもちろん、福井県鯖江市の職人のお力添えも欠かせません。
