利き手や利き足と同様に、目にも「利き目」が存在します。しかし、利き目とはいったいどのような役割を果たすのか、またどのような調べ方があるのかと気になる人も多いのではないでしょうか。
本記事では、利き目の基礎知識から誰でも簡単にできる調べ方に加え、利き目を把握して得られるメリットについても解説します。また、目の負担軽減に役立つおすすめメガネも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
アイリスター麻布クリニック院長
西之原 美樹先生
東京大学附属病院で研修後、東京逓信病院に勤務。2004年アイリスター麻布クリニックを開業。1万人以上の高校野球球児や野球選手、サッカー選手などアスリートの視力機能の向上に携わっている。目から身体全体の健康に関するアドバイスも行う。
日本眼科学会 / 日本レーザー治療学会
日本麻酔科学会 麻酔科標榜医 / 日本美容外科学会
日本ペインクリニック学会 / 日本抗加齢医学会員 / 産業医 等
利き目とは
よく使うほうの手や足を「利き手」「利き足」と呼ぶように、左右のうちよく使う目を「利き目」と言います。
利き目はものを見るとき主に使う目です。利き目でないほうの目は、利き目の見え方を補助する役割があります。
また、利き目は「優位眼」も関係しています。通常、ものを見るときは左右の目を同時に使って見る「同時視」を行なっていますが、脳の視覚野にある神経細胞は、両目からの情報を同時に処理できません。そのため、片方の目からの情報を優先的に処理しています。
このとき優先される目が優位眼です。利き目と優位眼が一致する人もいれば、異なる人もいます。
利き目を調べるメリット
自分の利き目が左右のどちらか調べておくと、日常生活のさまざまなところで役に立ちます。役立つ具体的なシーンをいくつか紹介します。
メガネの視力補正がしやすくなる
利き目がどちらかを知っていると、ものが見やすく、長時間かけても疲れにくいメガネを作りやすくなります。
たとえば、日常生活で目の疲れを感じている場合、メガネ店に利き目を軸にした度数の調整を依頼すると良いでしょう。。メガネのレンズの度数や焦点の位置などを利き目に合わせて調整した結果、物がより見やすくなり、目の疲れの軽減にもつながります。
メガネ店での視力測定では利き目の判別にも対応しているケースが多いので、利き目がどちらかわからなければ、店頭で検査すると目安がわかります。眼鏡市場でも、利き目を含む19項目にわたる視力測定を実施しており、結果に基づいて適したレンズやフレームを選べます。
ただし、メガネ店では視力測定のみです。眼病が疑われる場合は、眼科の受診を検討しましょう。
スポーツのパフォーマンスが上がりやすい
スポーツでは、利き目を意識して使うと、ものの動きをより正確にとらえられ、パフォーマンスの向上につながります。
たとえば、野球やサッカー、ゴルフなどのスポーツでは、ボールの動きを的確に追う必要があります。利き目を使えばボールの向きや速度、回転がより見やすくなり、また、もう一方の目から得る余計な情報を遮断しやすくなります。
具体的には、右バッターで左利き目の場合、ピッチャーから投げられるボールは左目が捉えやすく、タイミングの取りやすさやボールの見極めが向上すると言われています。
また、サッカーでは利き目と反対の足が、利き足として優位に動く場合もあり、キックやパスの精度に影響を与える可能性があります。
実際に、プロのアスリートでも利き目を意識したトレーニングをしている人は多いです。自分の利き目を理解したうえで頭や体の向きなどを調整し、野球のバッティングやゴルフのスイングなど、プレイ中に最適なパフォーマンスを出せるようにしています。
趣味や仕事に生かせる
趣味や仕事でものをよく見たいときに、片目を瞑り、もう片方の目でものを見ることがあります。その際に利き目を使うと、より正確に対象を捉えられます。
たとえば、一眼レフカメラでシャッターを切るときには、利き目でファインダーを覗くと被写体を追いやすくなります。同様に、望遠鏡や顕微鏡を使う際にも利き目のほうが見やすく、細部までしっかりと観察できるでしょう。ダーツや射撃など的を狙うゲームでも、利き目でターゲットを狙うと命中しやすくなります。
また、仕事においても、ものづくりの細かい調整や現場での測量など、正確さや精密さが求められるシーンで利き目が役立ちます。
自分の利き目がどちらかを知っていると、ものが見えにくいと感じたときに、利き目で対象を確認する判断ができます。見落としやミスが減ることで、効率や成果の向上につながるでしょう。
利き目の調べ方
自分の利き目が左右どちらかを知りたい場合、簡単に調べられる方法があります。
ただし、自宅など、自ら行うチェックには限界があり、さまざまな要因で結果が変わる可能性もあります。利き目を正確に判断したいときは、眼科医に相談するのが確実です。
あくまで目安を知りたい場合は、次の2つの方法を試してみましょう。
両手で三角形を作って片目ずつ中心を見る
1つ目は「ホールテスト法」と呼ばれる、両手を使った調べ方です。次の手順で行います。
1. 3~4m先に目印となるものを置く
2. 目印に向かってまっすぐ立ち、同じ高さに両手で三角形をつくる
3. 三角形のなかを覗き込み、片目ずつ閉じて、目印を見る
この方法で、目印が変わらず三角形の中心にあるように見える目が利き目だと考えられます。
目印となるものは3~4m先から見ても明確に判別でき、固定されているものがおすすめです。屋外であれば道路標識や植木鉢、屋内であれば時計や壁に貼った写真やポスター、そのほか家具や小物など、さまざまなものを目印にできます。
遠くにあるものを指さして片目ずつ見る
「ローゼンバッハ法」と呼ばれる、指先を使用して調べる方法もあります。次の手順で試してみましょう。
1. 3~4m先に目印となるものを置く
2. 目印に向かってまっすぐ立ち、目印を指さす
3. 片目ずつ閉じて、目印を見る
指先と目印が変わらず同じ位置にあるように見えるのが、利き目と考えられます。
目印となるものはホールテスト法同様、固定されている判別しやすいものがおすすめです。正確な結果を得るため、指を指すときは頭や体を動かさず、腕をまっすぐ伸ばすようにしましょう。
利き目の使いすぎによる注意点
利き目を知っておくと日常生活でいくつかのメリットを得られますが、あえて利き目ばかりを意識し、偏った使い方をした場合はリスクも考えられます。覚えておきたいリスクを3つ紹介します。
体調不良の原因になることがある
利き目を頻繁に使い続けると片目にのみ過度な負担がかかり、頭痛や眼精疲労など体調不良を引き起こすケースがあります。
体調不良を防ぐためには、両目でバランスよく見て、それぞれの負担を均等にすることが大切です。
また、長時間のデスクワークや読書など、目を酷使するシーンでは目を閉じる、アイマスクを使うなどして、定期的に目を休めましょう。
利き目ではないほうの目の視力が落ちることがある
利き目ばかりを使い続けると、もう一方の目の機能が衰える可能性があります。
脳は両目から入る情報を統合して距離感や立体感を確認しています。そのため、片方の目の機能が低下すると、距離感や立体感がつかみにくくなり、視覚全体に影響が出るおそれがあります。
このような問題を回避するためにも、利き目を意識するのは必要なときだけにして、普段は両目でしっかりと見ることが大切です。
運転中の視野が狭くなることがある
自身の利き目がどちらかを知ると、よく見える利き目でものを見ようとしてしまいがちです。具体的には、無意識のうちに利き目のほうへ対象物を引き寄せたり、首を傾げたりして見方を調整してしまう人がいます。
しかし、このような方法でものを見ると使っていないほうの目の神経が衰えてしまい、いわゆる「利き目偏重」の状態に陥りやすくなります。
その結果、たとえば右目が利き目の人が運転中に、反対の左側にいる人や車などに気がつかず接触事故を起こすといった確率が高くなってしまうリスクがあります。運転中は意識的に視線を動かし、視野が偏るのを防ぎましょう。
目が疲れにくいおすすめメガネ3選
長時間かけても疲れにくく、かけ心地の良さにこだわったメガネを3本紹介します。
● ZEG-S011
● FFT-088
● IA-423
ZEG-S011
おすすめポイント
● かけていると感じさせない超軽量モデル
● 細身かつ優れた耐久性で長く使える
● 似合う人の多いシンプルなオーバルフレーム
ZEROGRA(ゼログラ)は眼鏡市場の取り扱うブランドのなかでも、超軽量に特化しているのが特徴です。シリーズ平均で4.9gと圧倒的な軽さを実現しています。弾力性もあり、長時間かけ続けても疲れにくいでしょう。
ZEG-S011は、テンプルをはじめフロントは細身ですが、丁番やネジといった壊れやすいパーツをあえて採用せず耐久性も確保しているのが特徴です。3万回に及ぶ開閉テストもクリアしています。無駄のないスッキリとしたデザインと、定番のオーバルフレームによりあらゆるシーンでかけやすいメガネです。
詳細情報
フレームタイプ | オーバル |
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性別 | ユニセックス |
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レンズ横幅 | 49mm |
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間隔(鼻ブリッジ) | 17mm |
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テンプル | 138mm |
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天地幅 | 37mm |
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カラー | ブラウン/ゴールド/レッド |
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FFT-088
おすすめポイント
● 軽量かつずれにくい、かけ心地にこだわったメガネ
● ビジネスからプライベートまで使いやすいウェリントンフレーム
● クリアカラーとアクセントでデザイン性にも優れる
眼鏡市場の定番かつ大人気のオリジナルブランド「FREE FIT(フリーフィット)」のメガネです。軽量かつ弾力性に富んだ樹脂を採用しており、1日中かけても重さやずれに悩まされません。
知的かつ親しみやすい印象になるウェリントンフレームで、ビジネスでもプライベートでも使えるのも魅力です。
また、FFT-088はベーシックなブラックのほかに、ブルー、クリアブラウン、グリーンのクリアカラーも採用しています。光を通すクリアカラーは目元が明るくなり、見た目にも軽やかです。
丁番の部分にあえてメタルパーツを取り入れ、アクセントとしているのもポイント。ファッションアイテムとしても取り入れやすく、デザイン性を重視する人にもおすすめします。
詳細情報
フレームタイプ | ウェリントン |
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性別 | ユニセックス |
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レンズ横幅 | 49mm |
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間隔(鼻ブリッジ) | 18mm |
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テンプル | 142mm |
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天地幅 | 38mm |
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カラー | ブラックマット/ブルー/クリアブラウン/グリーン |
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IA-423
おすすめポイント
● 視野を広く確保できるスポーツ専用メガネ
● メガネのずれが気になりにくいヘッドグリップラバー採用
● フレームの縁が視界を塞ぎにくい、天地幅が広めのスクエアフレーム
趣味やスポーツにはスポーツ用のメガネがおすすめです。
IA-423はワイドアングルカーブにより視野角を広げるため、ものを広範囲で捉えられるのが特徴です。
また、ヘッドグリップラバーにより動いたときのずれも気になりにくい仕様です。スポーツならではの激しい動きや、頭を傾ける動作をしても安定したかけ心地を得られるでしょう。
さらに、IA-423はスクエアフレームを採用しています。天地幅が33mmとスクエアフレームのなかでも比較的広めで、フレームの縁が視界に入りにくいのも特徴です。
詳細情報
フレームタイプ | スクエア |
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性別 | ユニセックス |
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レンズ横幅 | 56mm |
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間隔(鼻ブリッジ) | 16mm |
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テンプル | 140mm |
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天地幅 | 33mm |
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カラー | ブラウン/グレー/ネイビーマット |
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利き目を意識したメガネの作り方
より見やすいメガネを作るために、利き目を意識したメガネ作りのポイントを紹介します。
左右の視力差を埋めるように調整する
利き目ばかり使っていると目に負担がかかり、視力の低下や左右差を生んでしまいます。そこで、左右の視力差を埋めるようなレンズ度数を選ぶ必要があります。レンズ度数については眼科医による視力検査か、メガネ店の店頭での視力測定に基づいて選択すると良いでしょう。
なお、人によっては前回の視力検査から期間が空いていて、視力に変化が出ている場合もあります。
視力測定なしでメガネを購入できるオンラインショップもありますが、度数の合わないメガネをかけ続けるのもまた、視力の低下や左右差を広げる原因になることがあります。直近に視力測定を受けてからの購入がおすすめです。
利き目がよく見えるように調整する
メガネをつくる際、近い度数のメガネをかけてみて、どちらが見えやすいか聞かれた経験のある人も多いのではないでしょうか。見え方を確認して問題なければ、利き目を参考にメガネを合わせることが良いとされています。
利き目の調べ方に関するよくある質問
最後に、利き目に関するよくある質問を紹介します。
利き目がない人はいるの?
利き目は左右の見え方の違いから判断されますが、中には利き目がわからない人も存在します。たとえば、左右の見え方がほとんど同じだったり、左右差が非常に小さかったりすると、どちらが利き目なのかハッキリしないことがあります。
ただし、利き目が不明な人であっても、日常生活を送るうち視力の変化や生活習慣の影響で左右差が生まれ、自然に利き目が定まることもあり、絶対的なものではないと言われています。
利き目は何歳から調べられる?
利き目が具体的に何歳で決まるのかは、詳しくわかっていません。利き手は2~8歳頃までに確定すると言われていますが、利き目も同じ時期に決まるかどうかは不明です。
しかし、利き手と同様に、利き目も成長の過程で徐々に定まる可能性があると考えられています。
たとえば、幼少期に片方の目を頻繁に使用していると、その目でよくものが見えるように、利き目として脳にプログラムされることがあります。これは、日常的に多用すると脳がその目を「優先的に使う目」として認識するからです。
利き目が明確になる時期には個人差があると考えられます。幼少期に利き目を調べたい場合は、医師の診断を受けるのがおすすめです。
利き目は変わることがある?
利き目は必ずしも一生を通じて同じとは限らず、状況によって変化します。たとえば、左右の目の見え方がほぼ同じ場合、利き目が明確に定まらず、条件によって右目が利き目となったり、左目が利き目となったりすることがあります。
また、片目が正視(正常な視力で、どの距離でもピントが合いやすい状態)、もう片方が近視(近くを見るときにピントが合いやすい状態)の場合、普段は正視の目を使っていても、近くを見るときには近視のほうが見やすくなるケースがあります。
このため、利き目を調べても、その状況によって見やすい目が変わり、どちらが利き目かを判断するのは難しいと言えるでしょう。
利き目を調べて日常生活に役立てよう
自分の利き目がどちらか知っていると、趣味や仕事、スポーツなどものをよく見たいときに役立ちます。メガネも作りやすくなるので、一度メガネ店で視力測定や眼科で視力検査を受けてみると良いでしょう。今すぐ自分でできる簡単なテストでも、自分の利き目の目安がわかるので、ぜひ一度試してみてください。
ただし、利き目に頼りすぎると体調不良や視力低下などのリスクもあります。必要なときのみ利き目を意識し、普段は両目でものを見るよう意識するのが大切です。