DIME × 眼鏡市場

DIMEと先読み!〝フチなし〟のお次は?2025年のブレークを読み解くセールススタッフ座談会

Vol.16 2025年トレンド予測編

2024年、メガネ業界は幾年か振りのメジャートレンド返り咲きに沸いている。クラシカルなメガネがトレンドに鎮座を続ける一方で、カラーレンズや調光レンズなどレンズをフックにメガネのニーズが拡大。日本では韓国アイドルが火つけ役となったツーポイント(フチなし)タイプを筆頭に、DIME世代にはどこか懐かしく感じられるような、ダブルブリッジ、単式跳ね上げといったフレームが、Z世代を中心に新たなトレンドとして芽吹いたのだ。

メガネを販売する現場に立つセールススタッフは、この変調期の兆しとも呼べる現状を、どのように眺め、そして次のトレンドをどのように見据えているのか?

全国1060店舗を構える店舗数No.1の眼鏡市場の中でも、屈指の集客率を誇る人気3店舗の店長が〝ネクストブレーク間違いなし〟のメガネを持ってスタジオ入り。2025年ヒット当確モデルの傾向を読み解く。

クラシックが盤石の中、形は丸からスクエアへ移行中!?

左から)関川敬宏さん/渋谷店 店長。推しは、オードリーと山田裕貴のオールナイト日本を聴くこと。
太田誓志さん/新宿東口本店 店長。オールタイムベスト映画は『フォレスト・ガンプ/一期一会』。
吉瀬泰輝さん/池袋東口本店 店長。1歳になるわが子の成長を見守ることが趣味と話す一児の父。

――今回はみなさんに、2025年にヒット当確間違いなし!のメガネを3本ずつご持参いただきました。本題へ切り込む前に、まずは今年のトレンドをサラッと総括させてください。

関川敬宏さん(以下、関川店長):そうですね。まず今回のトレンド分析にあたり、渋谷店の私はファッション感度の高い若年層向けのモデル、新宿東口本店の太田店長にはビジネスパーソン向けのモデル、そして池袋東口本店の吉瀬店長はかけ心地に優れた機能性モデルの3つの軸で、2025年にヒットしそうなモデルをセレクトしました。

関川店長:ざっとご覧いただけばわかるとおり、ジャンルは違いますが、共通するトレンド項目があるんですね。ひとつは〝クラシック〟であること。もうひとつは〝軽さ〟ですね。

吉瀬泰輝さん(以下、吉瀬店長):ご自身のファッション性を大切にするお客様の中には〝軽さは二の次〟という方もいらっしゃいますけれど、それでも眼鏡市場をご利用いただくお客様層を鑑みますと、ファッション性だけでなく、掛けやすさを重視される傾向にあります。

太田誓志さん(以下、太田店長):手頃で明朗会計な価格、それから〝軽さ・掛け心地〟に対するこだわりは眼鏡市場の本流といっても過言ではないですから。そのことをご理解いただけているからこその傾向だと思います。

――振り返れば『FREE FiT』や『ZEROGRA』を大ヒットさせていますし、PB商品の影響力は今なお絶大ということでしょうか。それでは早速、本題に入りましょう。今年らしいトレンドの形はありますか?

太田店長:タイトルにも挙がっているツーポイントは売れ始めたモデルのひとつといって間違いないと思います。それを除けば、細めのスクエアタイプ。より大きな流れをいえば、丸型からスクエア型へトレンドが徐々に移行しつつあるように感じますよね。

吉瀬店長:そうですね。太めのセルフレームや、逆にフレーム幅が細めで天地幅のやや広いスクエアはよく動きました。ボストンやラウンドといった丸型のシェープの人気は2025年も継続するでしょうが、高感度層はさらに一歩先に進みたがっているといった感じでしょうか。

関川店長:私はウェリントン、ボストン、オーバル、あとメタルセルコンビが、去年、今年らしいトレンドの形かなと考えています。おそらく、メガネが好きな方は、その手のモデルをすでに手にしていると思います。なので、2025年は〝より攻めた〟デザイン性を求めるだろうという視点でセレクトしました。

トレンドの揺り戻し!?進化した中太フレームが人気再燃!

左から)メタル素材のスクエアはGUCCI Eyewear『GG1678O-3』、セル素材のスクエアWAVES OPTICALの『WOP-004』、メタルフロントのワンブリッジはTHE BEDFORD HOTEL『BFH-23』。

――関川店長のセレクトで特に目を引くのは、WAVES OPTICAL『WOP-004』ですよね。太めがついに戻ってきたか!と。

関川店長:大人世代にとっては揺り戻しです(笑)。GUCCI Eyewear『GG1678O-3』は、先ほど吉瀬店長がお伝えした〝フレーム幅が細めで天地幅のやや広いスクエアタイプ〟。ツーポイントと同じように、韓国アイドルが火付け役となって、日本の若年層にウケています。

太田店長:ただ、玉形はベーシックなスクエアで、天地の幅を少し広げることでクラシカルな雰囲気をプラスしていますから、大人は似合わないかといえば、そんなことはありません。むしろ、掛けやすい部類のモデルだと思います。

吉瀬店長:確かに。ツーポイントと同じように、来年はやや幅広のメタルスクエアが海外で流行り出して日本にも飛び火するという可能性は強く感じますね。

関川店長:お次がWAVES OPTICAL『WOP-004』。私の一推しです。ちなみにこのWAVES OPTICALというのは、眼鏡市場が2024年9月に立ち上げた新ブランドです。「バイカーやサーファースタイルにハマる〝カッコよさ〟にこだわったディテール」をイメージした、立体的で重厚感のあるフレームを特徴としています。

――この手の中太、あるいは極太のセルフレームは、2000年代前半に一大流行しましたよね。記憶しているDIME世代は多いと思います。

関川店長:はい。でも、ただの懐古趣味というわけではないんですよ。一見すると存在感のあるスクエアタイプなのですが、フロントの内側がカッティングされていまして、ブラウン管テレビの画面部分の形状に似ていることからテレビジョンカットと呼ばれるディテールを採用しています。

実は、2024年はテレビジョンカットを採用する海外ブランドが相次ぎました。眼鏡市場でも満を持して投入したという感じです。なぜ感度の高い日本のお客様がテレビジョンカットを注視するかというと、いわゆるクラシックフレームは、海外のフレームをデザインソースにしているからなんです。

欧米とアジアでは頭の骨格が異なりますから、顔幅が狭くないと快適にかけられない。加えて、クラシックフレームは、年々フレーム幅が細くなる傾向がみられます。そこでトレンドの逆張りとして、ボリュームのあるフレームを探している方に『WOP-004』のようなスクエアフレームは、刺さるのではないかと読んでいます。

太田店長:いい読みだと思いますね。〝揺り戻し〟はファッション好きの定石。ここまでフレームが細くなった今だからこそ、また太めに戻ってきたくなるのは自然なこと。でも昔と同じだとつまらない。その点で〝テレビジョンカット〟という新鮮味が活きる。

吉瀬店長:もうひとつ付け加えるとしたら、『WOP-004』の見どころは、内側のスタイリングですね。

――なるほど。テンプルに内蔵している芯にレリーフが刻まれているし、蝶番が5枚なところも、これまでのPB商品にはないこだわりを感じますね。

関川店長:はい。ですので、テーブルにポンッと無造作に置いた姿でもカッコよく見えます。今年っぽさでいうと、フレームサイズがやや大振りかなと思いましたが、渋谷という土地柄なのか、予想以上にお客様から支持を得ています。2025年は大きなウネリになるでしょう。で、メタル素材のワンブリッジのTHE BEDFORD HOTEL『BFH-23』なんですが、これはセレクトが被ったので、説明は太田店長に譲ります(笑)。

太田店長:なんですか、それ(笑)。

若者のトレンドを逆手に取った〝逆張り〟クラシックに大注目

左から)THE BEDFORD HOTEL『BFH-23』、セル素材のウェリントンはTHE BEDFORD HOTEL『BFH-25』、メタル素材のラウンドはZEROGRA『ZEG-C01』。

――太田店長のセレクトは、ビジネスパーソン向け。ZEROGRA『ZEG-C01』は、MEGANE ICHIBA Magazineでも我々が何度も取り上げてきたフラッグシップモデルです。

太田店長:はい。ヒット予測企画ということなので、手堅い1本を選ばせていただきました(笑)。

関川店長:ズルいよね(笑)。これはもう売れているでしょ?

太田店長:2022年末のフルリニューアルで一気に洗練されまして、おかげさまで今年も好調です。でも、リピーターのお客様と同じくらい、新規で購入されるお客様も多いですから、来年もまだまだ伸びますよ。ね?

吉瀬店長:はい。池袋東口本店では、新規のうち半分くらいのお客様がZEROGRAを購入していますから、伸びしろはすごいですよ。

関川店長:でも、太田店長の一推しは今掛けているモデルでしょ?

太田店長:はい。THE BEDFORD HOTEL『BFH-23』です。この手のワンブリッジタイプは、これまで眼鏡市場では提案していなかった形なので、個人的にも好きなモデルのひとつです。

――先ほどからおっしゃられている〝ワンブリッジ〟というのは、眉間の辺りにあるトップバーのことですよね。でも不思議ですね。通常はノーズパットの付近にあるブリッジを省いているからでしょうか。テーブルに置いた時と比べて個性的な印象は薄れ、むしろ表情に透明感がありますね。

太田店長:そうなんですよ!実際に試着していただくと意外なほどシックで、アクの強さがマイルドに見える。ちなみに、このブリッジの強度を高めるために、金型を自社で製作しました。テンプルを開くとフロントが反り返るということも軽減しています。

吉瀬店長:『BFH-23』は池袋東口本店でも好調。構造がシンプルである分、高い製造技術が求められるんですね。左右対称で作ることもとても難しい技術ですけど、これを量産できるのが、自社工場を持つ眼鏡市場の強み。

関川店長:もちろん、『BFH-23』は今年も店頭で動きがありましたけれど、それは高感度な方にとって「待ってました!」というタイミングだったからでしょうね。いわゆる、トレンド先取りのタイミングでした。

例えば、クラウンパント(フロント上部が直線上にカットされ、下部は丸みを帯びたスタイル)を、最近よく見かけると感じている方は多いと思います。『BFH-23』はそのちょっと先じゃないですかね。自己表現できるメガネを求めている方はコレ。そしてちょっと挑戦したいという方が、ようやくクラウンパントに手を伸ばそうというタイミングなのだと思います。

――もう1本はスタンダードなウェリントンに見えますが、もしかして‶置き〟に行きました?

太田店長:とんでもない。実はこう見えて、単式跳ね上げ機構付きです。

――本当だ(笑)。パッと見では跳ね上げに見えませんね。というのも、ひと昔前の跳ね上げタイプは、連結部の蝶番が悪目立ちしていたり、フロント部が妙に張り出していたりで、見た目がイマイチでしたからね。

太田店長:おっしゃるとおりですね。その点でTHE BEDFORD HOTEL『BFH-25』は洗練されているんですよ。ボリュームのあるフロントは、スーツスタイルにも合わせられるトラッドなデザインですし、明るめのブラウンはスーツのお色と喧嘩しにくく、何よりも肌なじみが良い。柔らかな印象を演出したいビジネスパーソンにおすすめしたい1本です。

吉瀬店長:先ほど〝フロントが妙に張り出している〟という点にも眼鏡市場の工夫が隠されています。具体的に言うと、跳ね上げ機構の可動部である蝶番を、連結するフレームの内側に入れ込んでいるんですね。これは跳ね上げ部のレンズと目の距離の適正化にもつながりますから、普段から度付きレンズを使用されるお客様にもおすすめです。

関川店長:DIME世代のお客様にとっては既視感のある仕様かと思いますが、ワンブリッジや跳ね上げも、ファッションに敏感な若年層の方は新鮮味を感じて試着・購入されています。それを逆手にとってコーディネートを組み立てるような、高感度なビジネスパーソンも新しい風を感じ取っているというのが現状です。

軽さ、掛け心地に続く、第3の付加価値とは?

左から)メタルと樹脂を組み合わせた異素材MIXのサーモントはCotori『cot-1001』、プラスチック素材のウェリントンはi-ATHLETE『IA-R02』、メタル素材のヘキサゴンはZEROGRA『ZEG-S001』。

――吉瀬店長には、機能性という難しい切り口でセレクトいただきました。というのも、眼鏡市場は機能性に優れた様々なPB商品を展開しています。一般消費者のひとりとして、果たしてこの先はまだあるのか、と。

吉瀬店長:お任せください。フルチタン製の軽量で丈夫なZEROGRA『ZEG-S001』、βチタンをテンプルの素材に採用した韓国系フレームのCotori『cot-1001』といった、軽さ、しなやかな掛け心地といったメガネの機能性の王道を歩むモデルのほかに、日本初となる機能性モデルをセレクトいたしました!

それが「キズ回復」です。

――何だかすごそうな名前が登場しましたね。

吉瀬店長:ご承知のとおり、i-ATHLETEは、汗や激しい動きでもズレにくいスポーツ性能と、オン・オフ対応可能なデザイン性を両立した、眼鏡市場のオリジナルスポーツフレームブランドです。で、そのコアテクノロジーである側頭部を優しくホールドするストレスフリーな掛け心地は継承しつつ、超弾性素材でフレーム表面をコーティングしたというのが、『IA-R02』最大の特徴です。

吉瀬店長:これは高級車の内装にも採用されている技術で、実はメガネのような小さなパーツに応用するのは難しいとされてきました。それを可能にしたのが本品なんです。そして何を隠そう、現時点のメガネ業界でこれを実現しているのは眼鏡市場だけ!

太田店長:気になるのは、コーティングの効果ですよね。簡単に説明しますと、優れた弾性を付帯することで、細かい傷を埋めるようにカバーしてくれるという仕組みです。私たちは〝3年間変わらないかけ心地〟をスローガンに掲げ、オリジナル商品を開発していますが、その解釈を掛け心地だけでなく、見た目の美しさにまで広げた形です。

2025年はクラシカルをベースに〝細め〟と太め〟の二極化が進む!

――それでは今回の座談会の結論をまとめさせてください。

太田店長:繰り返しになりますけれど、ファッションと同じように、メガネのトレンドの流れもサイクルしています。それが2025年になって、いよいよ一周しようとしている、そんな潮目を感じたのが、2024年でした。

吉瀬店長:機能性に関しては、軽さや掛け心地といった要素は普遍的なものとして、新しい付加価値競争へシフトするでしょうし、フレームのシェープは、丸型からスクエアへと徐々に移り変わる傾向が見え始めました。

関川店長:ただ、トレンドは細分化するのが当たり前になりました。昔のように1本化するのではなく、2025年はボリューミーなモデルと、シンプルで華奢なモデルの二極化が進む年であると考えるのが妥当かも知れませんね。

取材・文/渡辺和博 撮影/藤岡雅樹

DIME
ビジネスパーソンのためのライフハックマガジンとして1986年に創刊したDIME。
仕事においてもプライベートにおいても、よりスマートな生き方を追求するビジネスパーソンをターゲットに、トレンド誌として常に”いま”を追い続け、有益な情報を日々発信しています。
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