近年、私たちはスマホやパソコンといった電子機器と向き合う時間が長くなり、目を酷使しています。それによって目の疲れだけではなく、身体に変調をきたすような眼精疲労に悩まされている人が急増しています。単なる疲れ目とは違いしっかりとした対策が必要な眼精疲労について、どのように向き合っていくとよいのか、眼科医の西之原美樹先生に詳しくお話をうかがいました。
アイリスター麻布クリニック院長
西之原 美樹先生
東京大学附属病院で研修後、東京逓信病院に勤務。
2004年アイリスター麻布クリニックを開業。
1万人以上の高校野球球児や野球選手、サッカー選手などアスリートの視力機能の向上に携わっている。
目から身体全体の健康に関するアドバイスも行う。
日本眼科学会 / 日本レーザー治療学会
日本麻酔科学会 麻酔科標榜医 / 日本美容外科学会
日本ペインクリニック学会 / 日本抗加齢医学会員 / 産業医 等
――2020年以降、眼精疲労で相談される方の状況はいかがでしょうか?
眼精疲労のご相談は増えています。やはり自宅にいる時間が長くなり、パソコンやスマホなどの画面を近くで見ることが非常に増えたため、職種や年齢に関わらず眼精疲労を引き起こしやすい状況になっています。眼精疲労は30代、40代に多いのですが、最近はリモートワークの影響か、20代、そして50代、60代の方でも増えています。小学生や中学生の子どもにも増加傾向がみられます。
――眼精疲労で受診される方は、どのような自覚症状をお持ちですか?
目が疲れる、まぶしくて目が開けられない、視力が落ちた気がする、とおっしゃる方が多いです。単に目が疲れるというだけであれば、一日ほど休んだり、目薬をさしたりと日常的な対応で回復するいわゆる疲れ目の眼疲労ですが、眼精疲労となると少し休んだだけでは回復しません。目の充血や痛み、ピントが合わないなどの症状のほかに、肩こりやめまいなど身体に症状が現れることもあります。このような症状があるものを、眼疲労と区別して「眼精疲労」と呼んでいます。
頭痛や肩こり、吐き気などのつらい症状の原因が、実は眼精疲労だったということもあります。目の症状だけではなく、「この肩こりは眼精疲労から来るのでは……」と来院されるご年配の方もいらっしゃいます。近年、眼精疲労が全身にもたらす影響への理解も徐々に進み、多くの方から注目されています。
――普段の生活の中で気づく眼精疲労のサインはありますか?
パソコンの画面をずっと見ているのがつらいと感じるなどが、気づきやすいかもしれません。代表的な症状には次のようなものがあります。
- ・パソコン、スマホの画面がまぶしくて見るのがつらい
- ・まぶたがピクピク痙攣する
- ・ものが見えにくくなった
- ・ピントが合わない
- ・涙がよくでる
- ・痛くて目を開けていられない
ほかにも身体の症状としては、頭痛、肩こり、めまいなどがあります。
目の構造として黒目の角膜には血管がないため、必要な酸素は涙から受け取っています。パソコンなどの画面をじっと見ているとまばたきが減り、目の表面から涙が蒸発して目の乾燥が進みます。その結果、だんだんと網膜の視細胞が疲れて働かなくなり、ピントが合わせづらくなってしまうのです。
眼精疲労を和らげる、大切なのは日常での心がけ
――眼精疲労には、どのような治療や処置があるのか教えてください。
適切な治療を行うためには、視力検査で目の状態を正しく知るところから始めます。車の運転やスポーツで遠くを見る場合、パソコンやスマホなど近くを見る場合、それぞれでしっかりと見えているか確認します。そして、必要であればメガネやコンタクトレンズの処方および度数の調整をします。他には、ピント調節をサポートする点眼液を処方したり、網膜の血流を良くして眼精疲労を緩和させる飲み薬を処方したりすることもあります。
――眼精疲労を和らげるために、日常生活で心がけると良いことはありますか?
目の中には「水晶体」というカメラでいえばレンズの役目をする部位があり、それを毛様体筋という筋肉が引っ張ったり、ゆるめたりして形を変えることでピント調節を行います。
人類が狩りをしていた大昔から、目は基本的に遠くを見るのが得意なようにできています。そのため、近くを長時間見つめていると毛様体筋に負担がかかり、眼精疲労や視力の低下が起こります。
パソコンやスマホを長時間見る方は、眼精疲労を和らげるためにも次のことを心がけると良いでしょう。
- ・1時間に1回はパソコンなどの画面から目を離して、5〜10分休む
- ・目の周りを軽くマッサージしたり、ホットタオルやホットマスクで温めたりして血流を促す
- ・森や星など遠くのものを見つめて、目をリラックスさせる
――メガネやコンタクトレンズの使い方で、気を付けるポイントはなんでしょうか。
メガネの場合は、自分の顔の形に合っているものを選んで、耳や鼻にフィットしているか確認してください。半年ほどするとフレームが少し歪んだり、ご自身の体形が変化したりと、当初とはフィット感が変わることもあるため、定期的なチェックが必要です。メガネだけではなくコンタクトレンズの場合も同様ですが、レンズの表面が汚れていると視界が悪くなり眼精疲労の原因になりますので、こまめにきれいにしてください。特にコンタクトレンズは直接目に触れるため、汚れによって目が傷つくこともあり得ます。また、目が乾く時は保湿の目薬をさすようにします。
――眼精疲労を和らげるには、メガネとコンタクトレンズのどちらが良いですか?
医学的な観点からはメガネがおすすめです。コンタクトレンズは目に直に接していて常に角膜にある神経を刺激しています。酸素や栄養分の含まれている涙も吸い取ってしまうので、目の角膜内皮細胞が弱ってきて次第にその数まで減ってしまいます。角膜内皮細胞が極端に少なくなると、目の新陳代謝が損なわれ、視力低下につながることがあります。
一方、メガネは、目の細胞に直接的なダメージを与えることはないため、安全・安心です。仕事のオンオフに合わせ簡単にかけ外しできることもメガネのメリットといえます。
――眼精疲労の心配があり、メガネの処方箋を受け取る時に気を付けたいことは?
人間の視力は時間に影響されることがあります。朝の9時から午後3時頃までに測るのがよいでしょう。夜に診察されてメガネをつくった場合、度数が安定しないこともあるようです。健康な目でも夕方になると疲れによって視力は落ちます。
可能でしたら、一度視力検査をして、その後時間をあけて再度検査をしてからメガネをつくるとよいでしょう。
新しい生活様式になり、テレワークやリモート会議の広がりによって、電子機器を見つめる時間の増加とともに、眼精疲労に悩まされている方が増えています。今回、西之原美樹先生にうかがったアドバイスを参考に、目を労わってあげてください。
簡易視力表でおうちでも視力チェック!
眼鏡市場では各店舗に、簡単に視力チェックができる簡易視力測定表をご用意しています。目の高さにあわせて壁などの平らな場所に貼って、3m離れたところから見るようにします。ご自宅など、気軽にチェックを行うことで、視力の変化に気づくことができます。
すでにメガネをかけている人も、現在使用しているメガネの見え方をチェックしてみてください。メガネの度数が合っていないことも眼精疲労の原因になる可能性があります。無料でお渡ししていますので、お近くの眼鏡市場にお気軽にご来店ください。
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