「老眼」という言葉に後ろ向きな印象を持たれている方も多くいらっしゃると思います。年齢を重ねると、体力や筋力が落ちるといった身体的変化があるように、「老眼」とは目の調節不良という変化によるものです。なんとなく見づらい、老眼かもしれないと思いつつ、老眼鏡をかけずに小さな文字を読もうとしていると、知らず知らずのうちに目元や眉間にシワがよっていたり、しかめっ面なっていたりと、むしろ老けた印象を与えてしまうことも。また、目を酷使させる状態になってしまうため、頭痛や肩こりといった不調の原因になることもあります。
「老眼」は、年齢を重ねれば誰にでも起こります。そのため、後ろ向きにとらえるよりも、前向きに理解することで、楽しく健康的な生活を送ることができると思います。
そこで今回は、老眼のよくある症状や自分でできる老眼のチェック方法などを、眼科医の西之原美樹先生に伺い紹介します。
私たちの目は、レンズの役割を果たす「水晶体」を「毛様体筋」と呼ばれる筋肉が引っ張ったり緩めたりすることで、水晶体の厚みを変化させ、ピント調整を行っています。近くを見るときは毛様体筋が縮むことによって水晶体が厚くなり、近くのものがはっきり見えるようになります。
一般的には40歳代くらいから水晶体の柔軟性や毛様体筋の筋力の低下などによる調節不良が起こり、近い距離にピントを合わせることが難しくなります。
これが「老眼」と呼ばれる症状です。
目の機能の調節不良・調節不全によって起きる症状であって、病気ではありません。年齢を重ねれば誰にでも起こります。
「もしかして老眼かも…」と気になりはじめてはいるけれど、「まだ老眼じゃない」と認めたくない方も多いのではないでしょうか。下記の項目は、「老眼あるある」ともいえるしぐさや行動です。
✓ 小さな文字が見づらくなった
✓ 夕方や照明の暗い場所での細かな文字が見づらい
✓ 電話番号を押し間違えることが増えた
✓ 3、6、8の数字を見間違えることがある
✓ 新聞やスマホを見る距離が遠くなった
✓ 眼鏡を外すと文字が見やすい
✓ メイクの際にアイラインが引きづらくなった
✓ 遠くはよく見えていたはずが、近くも遠くも見づらいときがある
✓ PC作業や読書などを行う際に集中力が低下した
✓ 長時間のPC作業の後は、目の疲れや肩こりを感じる
ここでは、自分でできる「老眼かんたんチェック」をご紹介します。「もしかして老眼かも…」と気になる方は試してみましょう。
自分の人差し指の指紋を見てみましょう。腕を伸ばしたり縮めたりしながら人差し指の指紋が一番はっきりと見える距離を測ります。その位置が目から30センチ以上離れている場合は、調節不良である老眼の可能性があります。眼科や眼鏡店で視力チェックすることをおすすめします。

老眼がはじまっているのに老眼鏡を使わずに生活していると、目のピント調節機能である毛様体筋に大きな負担がかかってしまいます。負担がかかった状態で近くを見るため、目が疲れてしまい、目の周りがピクピクと痙攣したり、目の奥に痛みを感じたり、頭痛や肩こりといった身体の不調をきたすことがあります。なんとか見ようと頑張らずに、視力にあった老眼鏡を使用することで、その疲れや不調から解放されるかもしれません。
今まで眼鏡を使用したことがない方は、健康診断で視力測定をする以外、ほとんど視力測定をする機会はなかったのではないでしょうか?眼鏡市場では、視力測定は無料です。視力アドバイザーが、お客様の日々の生活環境やお困りごとなどを問診させていただき、米国式19項目の視力測定項目に則し視力測定を行います。そのうえで、お客様一人ひとりにあった見え方を提案させていただきます。老眼鏡で初めて眼鏡をかける、という方にもお気軽にご利用いただければと思います。
眼鏡市場の視力測定ページへのリンク
「既製品の老眼鏡」は安価で手軽に購入できることが最大のメリットですが、それは一人ひとりの視力や目の状態を考慮した対応ができていない、ということでもあります。
「既製品の老眼鏡」は、左右のレンズが同じ度数でつくられているため、左右の視力に差がある方や乱視の方には使いづらかったり、瞳孔の位置とレンズの光学中心(度数が入っている部分)とがずれることによって、目の疲れを感じるケースもあります。
一方、「オーダーメイドの老眼鏡」は、通常のメガネを作るときと同様に一人ひとりの目の状態を確認し、視力を測定したうえで作ることができます。その際は、手元や近くのものを見る普段の姿勢なども確認しながら度数を調整していきます。また、老眼鏡であってもブルーライト対策機能や、紫外線カット機能など、ご自身のニーズに合ったレンズを選択することができます。見え方だけでなく、使い方に合ったレンズを選んで老眼鏡をつくることができます。
みなさんが疑問に思われていることにお答えします。
老眼鏡には特別なフレームが必要なの?
お好きなフレームで作っていただくことができます。普段着られるファッションに合わせたり、トレンドのデザインにするなど、ご自身の好みに合わせてフレームを選ぶことができます。かけ心地を体験しながら、軽いフレームなどの機能性フレームをお選びいただくこともできます。「老眼鏡だから」と思ってフレームを選ばず、「新しい眼鏡」を選ぶ気持ちで、ファッションアイテムの1つとして楽しみながら選んでみてください。
コンタクトレンズをしていても老眼鏡を作れるの?
使用されている近視用、乱視用のコンタクトレンズと併用しても大丈夫です。または、今使用されているコンタクトレンズが、遠くをしっかりと見えるように調整されている場合は、近くのものにピントを合わせるために、コンタクトレンズの度数を1〜2段階落とすケースもあります。ただ、自動車の運転をするなど遠くの見え方を重視する方、手先の繊細な作業をする方など、個人の生活スタイルに合わせて最適な見え方にする場合は、老眼鏡とコンタクトレンズの使い分けをすることをおすすめします。
老眼鏡と拡大鏡は何が違うの?
老眼鏡は近くの小さな文字などにピントが合いづらく、ぼやけてしまう見え方を補正するための眼鏡です。一方、拡大鏡(眼鏡型ルーペ)は、小さなものを大きく拡大して見るためのもので、使う人の年齢に関係なく、細かな作業をされるときなど、手元を拡大し、見やすくするためのアイテムです。
一般的に老眼は40代頃から始まると言われていますが、それよりも前に老眼になるケースは、どんな要因が考えられますか?
近年、スマホやタブレットなどを使用する時間が増えています。そのため、近距離で長時間ものを見る機会が増え、目の疲れを感じる方もいらっしゃると思います。その疲れが蓄積されることによって、若い方にも老眼の症状が見られるケースがあります。年齢にかかわらず、眼精疲労になる要因を予防するためにも、手元を見やすくする老眼鏡の使用を検討してみましょう。
スマホなど近業作業を長時間使用している最中に、ふと遠くを見ようとすると、遠くの景色がぼやけてしまう、見づらいと感じた経験はありませんか? これは、近くを見るときに使ったピント調節機能の毛様体筋の筋肉の緊張が緩まないために、遠くがぼやけてしまう「スマホ老眼」といわれる症状です。老眼とは異なり、一時的な症状ではありますが、30分に一度は遠くを見て目を休めたり、目を閉じて休ませたりなどのケアを行いましょう。
メガネ・老眼鏡をかけて目が悪くなることはない?
メガネ・老眼鏡をかけて目が悪くなることはありません。目が悪くなったように感じるのは、メガネをかけることで目への負担が軽減し、もともと無理してピント調節していたものが、無理していない本来の目の状態に戻るためです。むしろ、目の負担が減り、将来的に起こりうる目の疲れや、目を酷使することによって起こる体調不良などを予防することにもつながるため、使用目的に合わせて眼鏡をかけることをおすすめします。
初めてメガネをかける方の場合、メガネをかけ慣れないケースもあります。いろいろなメガネを試着してみて、かけ心地の良いもの、自分にフィットするものを探してみましょう。
老眼は治療で治せる?
目薬や飲む薬を服用することで、目の筋肉の血流や栄養を補充することができますので、目がすっきりしたり、目の疲れを緩和したりする効果はあると思います。しかし、老眼は加齢によるもののため、治ることはありません。
老眼を遅らせたり、予防したりする方法はあるの?
目の疲れ、眼精疲労を予防することをおすすめします。今や日常生活においてスマホやタブレットなどのデバイスを使わないことは難しいと思いますので、30分に一度休憩をとり、目を休ませるために遠くを見たり、起床就寝の1時間前からスマホを見ることをやめるなど、目のケアをすることをおすすめします。
近視の人は老眼になりにくいというのは本当なのでしょうか?
近視の方が老視(老眼)になりにくいわけではありません。近視の目の特性上、近くを見ることが得意なため、ピント調節機能が低下していても、それに気付きにくいだけです。
老眼の進行は何歳まで続く?
個人差があるため一概には言えませんが、70歳代ぐらいで進行が止まる方が多いようです。
老眼鏡をかけるタイミングは、老眼になってから?
夕方や暗い場所での文字が見づらくなったり、スマホや新聞を見る距離が遠くなったなど、気になる症状が出たなら早めに老眼鏡をかけることをおすすめします。
近くを見ることが多い方、視力の良い方、コンタクトレンズで遠くがよく見えるような度数をご利用の方は、早めに老眼鏡を使用されると目の疲れを予防することにもつながります。

「老眼」は病気ではありません。誰しもが年齢を重ねていく過程の中で体に起きる変化です。初めてメガネをかけるきっかけや、新たな自分の発見と考えた場合、老眼鏡はポジティブなアイテムになります。メガネのデザインやカラーも豊富なのでファッションやメイクなど、TPOに合わせて選ぶことができます。年齢を重ねたからこそできる楽しみでもあります。目の健康、ケアとともに明るく健康的な毎日を過ごしましょう。