視力矯正方法としてはメガネやコンタクトレンズを使用することが一般的ですが、日々の手入れなどに煩わしさを感じる方や、裸眼のようにアイテムを使わずに視力矯正を求める方がいらっしゃいます。そのような方々に注目されている視力矯正治療法に、レーシック、ICL、オルソケラトロジーがあります。しかし、このような言葉を聞いたことはあっても詳しいことをご存じない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、それぞれの治療法の特徴に加えて、視力矯正が不要な方も含め誰しもが年齢を重ねることで直面する「老眼対策になるのか?」という疑問について、眼科医の西之原美樹先生にお話をお伺いし、紹介していきます。
ここでは、レーシック、ICL、オルソケラトロジーの3つの視力矯正治療法の詳細について紹介します。
レーシックとは

日本では2000年頃から行われるようになった近視・乱視を矯正する眼科手術です。レーザーで眼の角膜表面を30ミリ程度切って「フラップ」と呼ばれるフタを作ったうえで、角膜の中心部をレーザーで削って屈折力を調整することで視力を矯正。その後、めくれている「フラップ」を元の状態に戻します。手術後、1〜2日ほどではっきり見えるようになります。ただし、18歳以下の方は手術を受けられないケースがあるほか、手術によって角膜が非常に薄くなってしまうため格闘技や激しいボディコンタクトのあるスポーツをされている方には向いていません。なお、レーシックでは老眼そのものの治療をすることはできません。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは

ICLとは、手術によって角膜に3mm以下の小さな穴を開け、角膜の下にコンタクトレンズのようなレンズを挿入する治療法です。近視・遠視・乱視・老眼の矯正ができます。日本では1997年に導入され、2010年に厚生労働省に認可された比較的最近の治療法でもあります。なお、視力が変化するなど目の状態が変わった場合には、再手術によってレンズを入れ替えることができる点がポイントです。ただし、18歳以下の方は手術を受けることができないほか、事前に視力測定など多くの検査を受けたうえで、その方に合うレンズを用意するため、手術までに1〜3ヶ月程度を要します。
オルソケラトロジーとは

オルソケラトロジーは、オーダーメイドのハードコンタクトレンズを、夜寝ている間に装着し、角膜を平らな形に整えて視力を上げる視力矯正治療法です。装用開始から1〜2ヶ月後には良好な裸眼視力が得られると言われています。他の治療法との大きな違いは手術の必要がないことに加え、昼間は裸眼で生活できる点が最大のポイントです。ただし、矯正されていた角膜が元の形に戻らないよう、夜間の装着を続ける必要があります。なお、レーシックやICLの手術が受けられない年齢の方にもご利用いただけます。

※オルソケラトロジー、コンタクトレンズについては、ご自身でのコンタクトレンズを装着できる年齢からの使用をおすすめしています。
これらは、日常生活においてメガネやコンタクトレンズを使用する必要があり、ないと生活に支障をきたすような方や、メガネやコンタクトレンズでも不便さを感じていらっしゃるような方に適した矯正治療法です。メガネやコンタクトレンズを使用することで支障のない方や、手術という 治療方法に心配な方はメガネやコンタクトレンズによる矯正が安心かつおすすめです。
気になる方は医師と相談し疑問などを解消した上で、ご自身にとって最適な視力矯正方法を選択することが重要です。
「老眼」って、どんな状態?
一般的には40歳くらいから「老眼」と呼ばれる症状を自覚し始めます。これは目の中のレンズの役割を果たす「水晶体」の柔軟性や、「毛様体筋」の筋力の低下などにより、調節不良が起こり、近い距離にピントを合わせづらくなる症状です。例えば、暗い照明のお店のメニューが見えづらくなったり、商品に書かれた裏書などが見えづらくなったりします。「老眼」は、年齢を重ねたことによる身体的変化であり病気ではないため、根本的に「治る」ことはありません。
ICLは老眼にも対応
ICLは眼内コンタクトレンズを目に挿入する手術によって、近視・遠視・乱視を矯正する治療法のため、目の調節機能が低下することによって起きる老眼のみを矯正することはできません。しかし最近、40歳以上の老眼を対象とした、有水晶体眼内レンズという遠近両用レンズを挿入する「IPCL」という治療法登場しています。
手術に抵抗のある方はメガネによる視力矯正がおすすめ!
治療にかかる時間や費用の問題ではなく、手術で目にメスを入れることに対して抵抗を感じる方もいらっしゃることでしょう。メガネは、体に負担をかけることなく視力矯正ができる安全性の高いアイテムです。また、メガネは近視、遠視、乱視、老眼はもちろん、見たい距離や使用したい場面に合わせてレンズの度数を調整することができるため、身体的負担が少ないことに加えて、多様なニーズに合わせることができます。
今回ご紹介した視力矯正治療法は、それぞれ特徴が異なります。また、本人の目や体の状態によっては受けられない治療法もあります。それだけにコスト面や手軽さを優先するのではなく、各治療法の特徴を理解し、納得した上で医師と相談して自分に合った治療法を選択することが大切です。
「人生100年時代」といわれる昨今、40歳くらいから老眼症状を自覚するようになるということは、誰しもが人生の半分以上を老眼と付き合うことになるわけです。見えないことにストレスを感じることなく、毎日をイキイキと楽しく過ごすためには、目の健康管理も大切です。メガネは、目にとって負担が少ないことはもちろん、ファッションやシーンに合わせて楽しむことができるアイテムです。ぜひ、ご自身に合った視力矯正方法を選択して、いつまでもイキイキとした目の健康を守っていきましょう。