2021年4月、眼鏡市場から新商品『FREE FiT(フリーフィット)ウイルスブロック』が登場しました。メガネ業界初となる抗ウイルス・抗菌性能を持たせることに成功し、適正・安心の証であるSIAA認証マークを取得したこれまでにない新しいメガネフレームとなっています。
今回はこの画期的な新フレームの開発者にインタビューを敢行。詳しい特徴から開発秘話までじっくりと話を聞きました。
インタビューに答えてくれたお二人
株式会社メガネトップ
商品開発部 商品開発グループ マネージャー
早田さん
福井県鯖江市のキングスタ―工場でメガネフレームの企画開発を担当。nosefreeシリーズなど数多くの商品を手がける。
アイテック株式会社
表面処理事業部 技術課グループリーダー
笠原さん
メガネフレームの表面処理に関する新技術開発や量産化を担当。この道一筋22年のベテラン技術者。
こういう時代だからこそ、社会の役に立てるものをつくりたい—。
開発当初から『試験機関に認証された抗ウイルス性能』は必須だと考えていた。
— 抗ウイルス・抗菌性能のフレームをつくる、という今回のプロジェクトはどのようにしてはじまったのでしょうか?
早田:アイテックさんとの初回ミーティングは2020年の6月頃、 新型コロナウイルス感染拡大のニュースが連日報道されていた時期でした。メガネという素肌に触れるものを扱う企業の商品開発担当者として、皆さんに安心して気持ちよく使っていただける商品を届けたいという想いから『抗ウイルス』機能をもったフレームがつくれないか、という考えを相談しました。
笠原:ちょうどアイテックとしても人々の衛生意識の高まりを受けて「これまで以上により安心して使ってもらえるメガネを開発したい」と、今回の相談をいただく以前から独自に研究をスタートさせていました。
早田:偶然にもそれぞれ同じゴールを思い描いていたんです。これまでにも、数々の商品開発でアイテックさんには技術面のサポートをいただいてきました。その高い技術を信頼したうえで「抗ウイルス性能を持ったメガネを世に出したい」という想いをぶつけさせてもらいました。
笠原:開発するからには『試験機関の認証をとった抗ウイルス性能』は必須だと、初めの段階から会話にあがっていました。技術担当としては当然プレッシャーもありましたが、「必ず期待に応えてみせる」と使命に近いものを感じながら技術開発に臨みました。
SIAA認証マーク取得、そのために500回以上テストを繰り返しました—。
抗ウイルス性能だけでなく、肌への安全性、耐久性などあらゆる面で理想のフレームを追求した。
— FREE FiTウイルスブロックの開発にあたって、チャレンジだったポイントを教えてください。
笠原:確かな抗ウイルス性を証明する必要があるということで、抗ウイルス・抗菌製品に関して最も権威のある機関である『SIAA(抗菌製品技術協議会)』の認証を目指しました。これが今回のプロジェクトで最大のチャレンジだったと言えます。
早田:FREE FiTウイルスブロックでは、フレームの表面をコーティングするトップコートに抗ウイルス剤・抗菌剤を配合しています。メガネ業界として初の試みでしたので、最適なバランスを見つけるまでには膨大な回数のテストを重ねました。
笠原:一口に抗ウイルス剤と言っても数多くの種類があります。その中でどれを使用するのか? どれくらいの濃度にするのか? 皮膜の厚みは? 塗料との相性は? いくつもの条件を少しずつ変えながら試行錯誤を繰り返しました。その回数は500回以上にのぼります。もちろん肌に触れるものですので、安全性にも非常に気を配りました。安全性の試験だけ個別に行い、基準を満たした抗ウイルス剤のみを使用するという厳格な姿勢で開発を進めていきました。
悲願の合格通知、そのときは手が震えました—。
メガネ製品として実用性も十分なものに仕上げるには、数多くのハードルがあった。
— メガネという製品で、抗ウイルス・抗菌性能を持たせるには多くの困難があったんですね。
笠原:難しかったポイントは他にもあります。トップコート皮膜のなかで抗ウイルス剤が沈殿してしまうと、うまく効果を発揮しないということがテストを繰り返すなかで分かってきました。皮膜のなかできれいに抗ウイルス剤が拡散するように、特殊な技術を用いてこの課題を克服しました。
早田:メガネ製品として完成させるためには、トップコートをフレームに固着させるために200℃近い熱を加える必要があります。高い熱を与えても抗ウイルス効果が維持できていなければいけません。これも難しかったポイントの一つです。
笠原:SIAAの認証を受けるためには試験結果を提示する必要あるのですが、開発当時は試験機関が非常に混み合っていて審査受付から結果通知まで半年かかると言われていました。商品の発売時期を考えると、必ず一発でクリアしなければいけないという大きなプレッシャーのなか試験に臨みました。試験結果が出るまでは眠れない毎日で…(笑)。結果通知のメールを開封するときは、本当に手が震えていました。これまでの仕事を振り返ってもこれほど緊張したことはありません。
試験に使用された試験材と、実際の試験結果報告書
<SIAA認証に必要な試験の流れ>
① 抗ウイルス加工された試験材にウイルスを含む液体を垂らす
② 24時間放置して細菌感染性のあるウイルス量を測定
③ 抗ウイルス加工されていないものと比較して、ウイルスの量が1/100以下になっていれば試験クリア
ただし①〜③が、新品状態のときだけでなく水や紫外線にさらされた後でも同様の効果が確認されなければ試験クリアとはならない。
改良デザインを見た瞬間、これはいけると思いました—。
お客さまの声に応えるため、これまでのFREE FiTシリーズにない新たなデザインにも挑戦した。
— 抗ウイルス性能の他にも、工夫やこだわったポイントなどはありますか?
早田:多くのお客さまに手にとっていただくためには、抗ウイルス性能だけではなく外観の美しさも大切だと考えていました。SIAA認証をクリアするだけの抗ウイルス性能は発揮しながら、外観を損なうことなく美しさを保つ。この両立には苦労しました。
笠原:抗ウイルス剤というのは乳白色をしています。トップコート自体は無色透明なのですが、抗ウイルス剤を配合すればするほど白く濁ったような印象になっていきます。配合量が多い方が試験は通過しやすくなるのですが、試験のことだけではなく美しさも保てるように何度も調整を繰り返しました。
早田:外観の部分で言うと、デザインにもこだわりがあります。かねてよりFREE FiTシリーズのデザインバリエーションを増やしてほしい、というお客さまの声は耳に届いていました。そこで、今回はこれまでとは違うやり方でデザイン開発に取り組みました。社内に新たに発足したデザインチームに声をかけ、もともと考えていたデザイン案を一度白紙に戻して、デザインの改良に取り組みました。
早田:今回のデザインでは、玉型(たまがた)と呼ばれるレンズを縁取るフレームのフォルムを変更するなど、随所に細かなメスを入れています。デザインチームから届いた改良版デザインを見た瞬間に「これはいける!」と感じました。それくらい自信を持っておすすめできるデザインに仕上がっています。ここまで来るのにおおよそ1年、長い道のりでした。
メガネはなかなか洗えない、だからこそウイルスブロックで安心を—。
毎日手で触れるメガネを、ウイルスや菌の心配をすることなく安心して使っていただけるものに。
— これからFREE FiTウイルスブロックを手に取る皆さんに向けて、伝えたいことはありますか?
早田:新しい生活スタイルに変わって、皆さん手洗いや手指の消毒はこまめにされているかと思います。ですが、メガネは頻繁に手でさわるものなのに、なかなか同じように洗ったりすることは難しいのが実情です。いつも身に着けるものは清潔で安心できるものを選びたい、という皆さんにぜひこのFREE FiTウイルスブロックを試してみていただけたらと思います。
笠原:私自身もそうなのですが、日常生活のあらゆるところで手で触れるものが清潔かどうか気になるという方は多いのではないかと思います。毎日手で触れるメガネでは、そのような心配をすることなく安心して使っていただけるように、という想いを込めてこのフレームを開発しました。多くの方に愛される商品になってくれたらうれしいですね。
早田:FREE FiTシリーズはこれまでたくさんの方に選んでいただいていますが、今回のウイルスブロックはこれまでとは一味違うデザインもポイントです。すでにFREE FiTを愛用している、という方もぜひ注目していただけたらと思います。
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